私が勤めるデイサービスでは、自立した方もおられますが、心身に弱さを持つ方も来られています。移動には車いすが必要な方で、椅子やトイレへの乗り移りのときに、不安から、手摺を強く握って放そうとされない方もおられます。そのような方の介助に当たった時のことです。研修で、「無理に放してもらおうとせず『握手しましょう』などと働きかける」と学んだことを思い出し、しばらく背中をさすりながら、手摺を握っておられる手のほうに私の手を差し出しました。すると、手摺から手を放して私の手を握ってくださったのです。その手を私の首に回し、無事に乗り移ることができました。その時、思いもかけないことが起こりました。その方が、私の首に回した手を私の背中の方に下ろし、子どもをあやすようにトントンとしてくださったのです。その優しさとぬくもりを忘れることができません。涙が出ました。心が通い合った瞬間でした。
　『それぞれ、自分のことだけでなく、ほかの人のことも顧みなさい。』と聖書にあります。
　相手の気持ちを大切にする思いは伝わるのですね。そして、相手も温かく返してくださって、ぬくもりが倍増し、伝わって行くのですね。自力では乗り移ることも困難な方から、大きく強い力をいただきました。


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