私は通勤で長い間電車を利用してきましたが、車内の様子も変わってきました。コロナ禍で乗客のマスク姿は普通のこととなりました。席はひと頃、一つ飛ばしに座っていましたが今は隣り合わせです。
　ある日、爽やかな光景に出会いました。それは夕方の電車で私は席に座ってうつらうつらしていました。人の話し声が聞こえてそちらに目を向けると、大きなリュックを背負った年配の男性と、鞄を下げたサリーマン風の若い男性が向かい合って立っていました。若い男性が年配の男性に席を譲っているようでした。年配の男性が言いました。「ありがとうございます。感謝します。実は私、今日誕生日なんです。90歳になりました。」男性は驚いたような顔をやがて笑顔に変えて答えました。「そうなんですか。若いですね～。」年配の男性も笑顔で会釈しながら席に座りました。そして大きなリュックを膝に乗せ、中から本を取り出して読み始めました。立った男性は少し離れて窓の外を見ている様子です。やがていくつかの駅を通り過ぎドアへ向かう男性の後ろ姿が見えましたが、ドアが開くとすぐにその姿は人波に消えていきました。年配の男性は読み物に夢中であったのか、男性が降りたことに気付かないようでした。動き出した電車の窓からホームを歩く男性の姿がちらっと見えたように思いました。この男性には小さな子供さんがおられるでしょうか。こんなお父さんに育てられる子供さんは幸せだなと思いました。一方大きなリュックを背負っていた年配の男性はとても若々しい感じでしたが、それにも増して男性と話している時の笑顔は「誕生日の贈り物をありがとう」と言っている子どものようにも感じられました。小さな気配り、小さな行いかも知れませんが、それは愛から出たものだと思わされました。愛の源は神だと聖書は言っています。
　

 

  

ほっとひと息　一覧（NEWS一覧）
https://ccnz.jp/news/