我が家のベランダに鉢植えの金柑の木が三本あります。その内の一本に初めて実がなりました。１０年以上前のことですが冬になると好んで金柑を食べていた義母が、ある日自分が食べた金柑の種を見ながら「これ蒔いたら金柑が育つんやろか」というので、「じゃあ試しに蒔いてみようか」と私は数個の種を小さな鉢に植えました。やがていくつか芽が出て育ち始めたので成長に合わせて大きめの鉢に植え替えていったところ、現在三本が枯れずに残り春になると新しい葉を繁らせています。実は何年もの間、私は金柑の葉につくアゲハチョウの幼虫が成虫に育つのを観察することに心が向いて実りについてはほとんど考えていませんでした。しかしここ数年、夏に小さな白い花が咲くようになったことに気が付き、昨年の春は意を決して、産み付けられたアゲハの卵と幼虫を全て駆除して葉を守りました。その結果12月にたった一つですが黄色い実がなっているのを発見したのです。長い間実りを期待していなかったことを少し申し訳なく思うと同時に、いのちの営みのすばらしさを改めて覚えました。義母は６年前に召されましたが、この貴重な金柑の実は、義母を慕っていた中学生の姪が喜んで食べてくれました。今シーズンも実りを期待して見守っていこうと思います。
                                         　　　                          

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